あなたのお気に入りの作家は誰ですか?

「あなたのお気に入りの作家は誰ですか?」
この問いに、あなたなら誰だと答えるだろうか。
私なら躊躇なく宮城谷昌光氏を挙げるだろうし、実際にお薦めの作家を聞かれた時には氏の名前を答えている。


私と氏の作品との出会いは、大学時代になる。
当時、JR吹田駅の近くにある書店でアルバイトをしていた。時給は決して高くはなかったが、勤務シフトをかなり自由に組むことができ、クラブ活動で忙しかった私には非常にありがたい環境だった。もちろん、私自身本を読むことが好きで、本屋さんが大好きであるという点もアルバイト先を選ぶ決め手だった。
私がそうであったように、他の店員も本好きな人が多かった。閉店時間近くになるとお客さんの数は少なくなる。閉店準備をしながら、他の店員と、あの本は面白かった、などという会話を交わすことも多い。
ある時、女性社員がいつもの感じで「何か面白い本ない?」と聞いてきた。
私はたまたま数日前の新聞で広告を見て面白そうだと思った本の名前を挙げた。「『夏姫春秋』とかどうですか?」
宮城谷昌光氏が直木賞を受賞した作品で、ちょうど文庫で発売されたところだったのだ。古代中国を題材にした小説という珍しさが、大学で古代中国史を専攻していた私の興味を引いたのだろう。
だが、その社員さんは夏姫春秋を購入して帰ったが、私は結局その時は読まなかった。確かその頃は別の本を読んでいて、それを読み終えてから買おうと思って、そのまま忘れてしまったのだと思う。
実際に読んだのは、それから1年くらいしてからだった。面白かった。面白いというしか言いようがなかった。
『王家の風日』『天空の舟』と続けて読み、早く次が読みたいという渇きを覚え続けた。


今、会社の行き帰りに『楽毅』を読んでいる。もう何度目か忘れてしまったが、何度読んでも面白い。そう思える作家や作品に出会えることは、極めて幸せなことである。
あなたには、そんな作家がいますか?